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【 inswatch 】Vol.654
===============================================Vol.654 2013.02.11=======
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■専業代理店の経営管理に関するアンケートのお願い■ インスウオッチ
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アンケートにご回答頂いた全員に、もれなく、1日5分で付けられる超簡単営
業日報(エクセル版)を差し上げます。
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■■■ もくじ ■■■
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【0】め・て・みみ
=2重構造解消の道=
【1】ビューポイント「石さんの保険業界、単眼、複眼」
=来店型店舗、8社で1千店を突破=
【2】保険市場の縮小と新たな市場創設(4) 尾籠 裕之
=層別化営業の事例=
【3】過去の成功と闘う(6) 金 斗 雲
=今でも隣の芝生は青いか 現物給付論の時代錯誤=
【4】つくる・かわる・ずっとつづける(70) 葭谷 広行
=老舗料亭旅館での話=
【5】生命保険の仕事は関係構築ビジネスです(25) 宮本 久史
=暇だと思われてもいけないが、
忙し過ぎると思われるのはもっとまずい=
■ 専業代理店の経営管理に関するアンケートのお願い インスウオッチ
■ inswatch facebook club comment@inswatch
■ インスプレス=績文堂 保険関連図書案内 新刊『超保険進化論』
■ 編集後記
■ 配信先電子メールアドレス変更のご案内
■ 投稿方法・バックナンバー閲覧サービスのご案内
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【0】め・て・みみ
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2重構造解消の道
保険の募集・販売は長らく2重構造問題を抱え、その高コスト構造の清算が求
められてきた。本来コストセーブ型で選択されたはずの代理店というビジネスモ
デルが思いのほか高コスト化したのは、保険会社の営業社員との二人三脚でしか
機能しなかったからだ。今や競争環境下で、そのあり方にも鋭いメスが入りつつ
ある。
それを自覚している代理店は、自主独立を掲げ組織化に向けいち早きつつある。
一方、未曾有の収益悪化に直面する保険会社の事業モデル転換も急ピッチで進見、
ローコストオペレーション戦略も鮮明になっている。
代理店の自主的な経営展開による「独立型」を選ぶのか、保険会社とともに行
く「調和型」を目指すのか、あるいはその折衷路線をとるのか、さらには、保険会
社のコントロールで直営展開する「一体型」で行くのか。製販分離から製販連合、
製販統合まで代理店の選択するビジネスモデルは多様化している。
いずれにしても「依存型」の二重構造体質はもはや許される時代ではないため、
どのような解消の道を選びとるかが問われている。試行錯誤の中で、いろいろな
モデル構築が試されてきているが、顧客の支持を集めるのはどのようなモデルと
なるのだろうか。
(中崎 章夫)
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【1】ビューポイント「石さんの保険業界、単眼、複眼」
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来店型店舗、8社で1千店を突破
◇FC展開で店舗数拡大
全国展開する保険の来店型店舗がその数を増やしてきている。最大の店舗数を
誇る「ほけんの窓口グループ」は先週、愛知と大阪に2店舗をオープン、全国で
369店舗(「ほけんの窓口」235店、「みんなの保険プラザ」100店、「ほけんの
専門店」34店)に達した。筆者の知るところでは、現在、全国に約50店舗以上を
展開する代理店(流通系含む)は8社となっているが、8社合計の店舗数は1106
店と1000店を突破するに至っている。
また、全国の主要都市や地域を中心に10〜30店舗を展開する来店型ショップも
約200店舗程度、さらに10店以下の店舗および保険会社による来店型店舗を加え
ると、凡そ2000店舗を超すと見られるが、今後、さらに拡大が予想される。
こうした店舗数拡大で注目されるのは大手来店型店舗によるFC展開で、それが
店舗数拡大の要因になっている。すでに「ほけんの窓口グループ」は、130店舗
超がFC店となっている(2012年12月現在)が、他の主要来店型店舗でもFC戦略の
強化が見られる。FC参加の大半が地域密着型の生・損保代理店だが、異業種から
の参入も目立つ。そしてこれら代理店の中には地域において4〜5店舗から20店舗
を展開するところもでてきている。また最近では損保代理店からのFC参入が増え
ているのも特長だ。
◇損保代理店からのFC参加も増加
損保代理店のFC参加の共通点は、「損害保険中心の代理店の将来性を危惧した」
「生保販売も行なっていたが大きな売り上げに至らなかった」「損保の手数料が
手数料が逓減される中で生保の売り上げ増が今後の代理店経営に必要と考えた」
(ほけんの窓口グループ「FC事業」より)などが主な理由で、損保市場の狭隘化
や手数料の減少を背景にある。
損保代理店にとって、生保販売が今後の経営にとって必須条件となってきてい
るが、生保拡大の手段としてブランド力がある来店型店舗と提携(FC)する事に
よって、収益増加と地域において差別化を図ろうというのが狙いだ。また、FC参
加の損保代理店は、乗合型ばかりでなく専属代理店からの参加もあるのも注目さ
れる。
ただ、FC参加によってノウハウの提供や教育・支援、ブランドによる集客など
のメリットはあるものの、先行投資型のビジネスモデルであるだけに経営の手腕
も試されることになる。
◇競争激化と規制強化も
一方、来店型店舗も数の拡大に伴い競争が激化しており、従来の1社専属チャ
ネルを念頭に置いた差別化戦略(比較購入、見直し相談、コンサルティング)、
から、同業他店舗との差別化が求められてきている。今後、「保険特化型(生・
損・少短)」、「保険と金融商品融合型」、「生活総合ビジネス型」などのビジ
ネスモデルの選択も迫られてきている。加えて、金融審議会「保険商品・サービ
スの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」で大規模乗合代理店(主に
来店型店舗)に対する募集(商品選定の適切性、募集コストの開示、乗合代理店
のFCの指導・監督や教育の体制整備)のあり方が論議され、規制強化の方向にあ
る。そうした中で、今後、来店型店舗がどこまで拡大するのか注目されるところ
だ。
◇来店型店舗8社の店舗数(2月10日現在)
「保険の窓口グループ」(369店舗)、「保険クリニック」(161店舗)、「保
険見直し本舗」(161店舗)、「みつばち保険ファーム」(143店舗)、「イオン
保険ショップ」(82店舗)、「保険ほっとライン」(83店舗)、「保険の110番」
(56店舗)、「ライフサロン」(48店舗)
(石井 秀樹)
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【2】保険市場の縮小と新たな市場創設(4) 尾籠 裕之
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層別化営業の事例
◇合併後の契約の引継ぎ
前回は層別化営業で陥りやすい失敗例について述べましたが、今回は前回の落
とし穴を踏まえて実施した例をお話しします。あらかじめお断りしておきますが、
層別化のやり方は状況に応じていろんな変形があります。今回述べる事例もその
うちの一つだと考えてください。
この事例は、合併した代理店における前社長の契約引き継ぎの事例です。
二つの代理店が合併し、合併後2年目に一方の代理店の社長が高齢になり引退
することになりました。その社長の契約を引き継ぐやり方として、残された人た
ちが考えたのは事務担当者主体で引き継ぐことでした。事務担当者2名が主体と
なって契約を引き継ぎ、営業担当者がそれを補佐する、という構図です。事務担
当者2名は、引退した社長の契約を保全していましたので、ある程度お客様のこ
とを知っています。1名は外出可能で、1名は事務所常駐という態勢です。
できるだけスムーズに引き継ぎ、更改落ちを少なく、できれば追加契約を狙う、
という方法はないかという相談があり、層別化のワークショップを行うことにし
ました。参加者は合併代理店の専務、営業担当者、それに2名の事務担当者です。
まず、例によってどんなお客様かを分析していきました。結構優良なお客様が多
いということが分かりました。ただし、高齢のお客様が多いということも分かり
ました。ほとんどが個人のお客様です。前社長の人的魅力で契約されたお客様が
多いということです。
◇層別化による契約一覧の作成で成果
層別化作業を進めていくと、優良なお客様の比重が結構大きいということが分
かってきました。前社長が現役の頃から、社長が自ら面談するお客様と事務担当
者が電話もしくは郵送で更改を行うお客様に区分けされていて、事務担当者があ
る程度更改作業を行っていることも分かってきました。問題は、前社長が自ら面
談されていたお客様をどう引き継いでいくかです。
さらに層別化を進めていきました。その中で、前社長が契約した保険の中で、
10年目で見直しが必要な保険があることが分かりました。優良顧客層にその契約
が多いということも分かりました。その契約を新たな保険に切り替えることがで
きれば、契約者との関係も新たに構築できるし、新規の契約獲得にもつながる、
ということになり全員がその方向に行くことに賛同しました。
そこからが問題でした。どうやって該当する優良顧客に説明し、切り替えを勧
めていくのか。いろんなやり方を議論しましたが、事務担当者2名は納得しませ
ん。少しでもセールストークをいわなければならない、ということが分かると、
私たちはセールスはできません、といって拒否します。
営業担当者が最後に提案をしてそれが採用されました。その営業担当者は独自
に契約一覧を作っていて、お客様が契約している契約の内容を説明していくと、
多くの客様が喜んでくれ追加の契約が出やすくなるという経験をしていたのです。
ただし、契約一覧を作るのは結構手間で作業負荷が大きいので、限定したお客様
だけに契約一覧を作っているということでした。事務担当者が合意したのは、契
約一覧ですでに入っている契約の説明を行うだけでいいのなら、このやり方を受
け入れるというものでした。
すぐに契約一覧を効率よく作成する方法が検討されました。さいわいパートの
事務員がいて、パートの事務員に手伝ってもらうと作業負荷が大分軽減できるこ
とが分かり、実施計画ができました。
優良顧客で、特定の保険の契約応当日が近づいているお客様を選定し、契約一
覧を作り、事前に郵送しておき、アポが取れたら面談し、アポが取れないお客様
には電話で説明する、という活動です。
このやり方を始めて1年半ほどになりますが、合併代理店の専務は高く評価し
ています。
◇層別化による相乗効果
その理由の一つは、結構引き継ぎがうまくいったことです。面談だけでなく電
話においても、きっちりと契約内容を把握して適切な説明をしてくれるというこ
とで、前社長の人的魅力で加入されたお客様も現在の担当者に一定の満足度を感
じておられるということです。
二つ目は、この活動を通じて事務担当者の顧客対応スキルが付いたことです。
特に面談を行っている事務担当者は相当自信が付いてきたといわれています。
三つ目は、追加の契約が一定の割合で出てきたことです。層別化で優良顧客と
認識したことは間違っていなかったのです。そういうお客様は、契約者自身は高
齢ですが家族を紹介してくれお客様の間での世代引き継ぎができたところもあり
ます。
四つ目は、担当者間で工夫が出てきたことです。事務所に常駐で電話だけでお
客様に対応していた担当者からアイデアが出ました。電話の対応で反応が良かっ
たお客様を営業担当者につなぐことにしたのです。結果は、反応が良かったお客
様からの成約率が非常に高い、というものでした。
この事例で注意したことは、層別化作業に力を入れず、実行することに重点を
置いたことと、優良顧客以外のお客様への対応は議論しなかったことです。まず、
優良顧客への対応で実績を積む、このことの方が効果は大きいのです。
層別化営業は幅広いものですから、この事例だけからセオリーを見つけるとい
うわけにはいきませんが、結構良いヒントがあると思っています。
((株)業務プロセス研究所 代表取締役)
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【3】過去の成功と闘う(6) 金 斗 雲
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今でも隣の芝生は青いか 現物給付論の時代錯誤
隣の芝生は青い。隣の花は赤い。隣の糂味噌(糠味噌と同義)。我が家の芝生よ
りフェンスの向こう側の芝生は、いつでも青い。何でも他人のものはよく見える
ものである。
◇長い期間の保険専業規制と「付帯サービス」
保険会社は、保険事業だけを行い、他の事業を兼営することが許されない。こ
の保険監督は明治に始まり、現在も続いている。お陰で怪しげな風俗営業も千三
つの博打的な事業もできず、安定して保険サービスを顧客に提供できている。現
在の保険業法の前身となる法律を起草した法典調査会では、明治時代に実態調査
をしている。法典調査会の議事録には、神田の薪炭商が火災保険の類似事業をし
ているのは問題であるという記述がある。しかし、全面的な保険専業だった訳で
は無い。明治41年に設立された第一機関汽罐保険株式会社は、ボイラーの検査と
保険引受を行っていた。つまり、事故が発生したら保険金を支払うだけでなく、
ボイラーの検査サービスも提供していたのである。
ボイラーの検査と保険引受は小規模だったが、第二次大戦後の示談代行サービ
ス付き自動車保険は、損害保険業界全般に亘る大きな出来事だった。自動車保険
に示談代行サービスが付帯されているのが、日本では当然だと思われている。し
かし、このサービスは世界的には例外的であり、日本独特である。昭和40年代に
モータリゼーションが急速に進行したなか、社会的な必要性に即応するべく導入
されたものである。もし、保険会社がこのサービスを提供しなかったとすれば、
おそらく法律事務を独占している弁護士の少ない数では急増した交通事故の法律
的な紛争に対応できず、事件屋と呼ばれる事故処理請求処理のやくざな稼業が横
行し、多くの被害者が出たことだろう。小規模零細事業の弁護士では、大きな企
業体が実現した組織的で均質・効率的なサービス提供は不可能だったろう。示談
代行サービス付帯の自動車保険は、損害保険業界の業績向上に寄与しただけで無
く、自動車社会をおける損害保険業界の偉大な貢献でもあった。その後も、海外
旅行傷害保険におけるアシスタンスサービスも、同様に保険販売に寄与したこと
は間違いない。この成功体験は、保険専業において保険金を支払うだけでなく、
付帯サービスを実施すれば業績向上に繋がるはずだとの暗黙の確信を与えてきた
かもしれない。
◇日本経済新聞一面トップとなった保険の「現物給付」報道
2013年1月15日付け日本経済新聞は、第一面トップで、生保の現物給付に関す
る特ダネを掲載し、「生保の現物給付解禁、金融庁、介護や葬儀など、保険金受
給と選択」と報じた。この問題は、金融審議会の保険商品・サービスの提供等の
在り方に関するワーキング・グループで2012年から検討さていたが、このような
決定はまだされていないから、特ダネなのだろう。この金融審議会ワーキング・
グループは、保険商品・サービスの提供等の在り方について検討するために設け
られた。検討課題は、「我が国における少子高齢化の急速な進行などの社会経済
の変化を背景に、保険に対するニーズが多様化している。このような状況のもと、
保険契約者の多様なニーズに応えるための保険商品やサービスの提供及び保険会
社等の業務範囲の在り方」である。2012年6月15日付け金融専門紙であるニッキ
ンは、金融庁は、保険分野の幅広い商品開発を可能にするための規制緩和を検討
しており、少子高齢化の進展で保険契約者のニーズが多様化しているので、法律
上の制約を取り除き、商品設計の自由度を高めることが狙いであり、保険金の代
わりに介護サービスなどを提供する現物給付型保険などの販売が解禁される可能
性があると報じた。規制緩和の一環として現物給付型保険を解禁するという流れ
を報じたのである。
金融庁は金融処分、金融取締をするだけの監督当局ではない。産業振興とその
ために規制緩和に努めることもある。金融業の国際競争力を高め、金融業の振興
を進める意図があると表明している。その好例が、金融審議会に我が国金融業の
中長期的な在り方に関するワーキング・グループを設け、我が国金融機関の国際
競争力の強化、我が国経済・金融業の一層の発展を図るための中長期的な課題等
について検討したことである。同ワーキング・グループが公表した報告書(昔の
審議会答申)では、生活者としての個人に対する金融サービスの向上が官民「共
働」して取り組むべき課題であり、人口減少・少子高齢化の構造変化等を踏まえ、
金融機関が変化に応じて柔軟に新たなサービスを開発し提供できるよう金融当局
として環境の整備を進めるべきであると指摘している。
◇介護サービス分野における、サービス開発とイノベーション
金融審議会の保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グル
ープでも日本経済新聞の報道でも、介護サービスの現物給付型保険が取りあげら
れている。
介護サービスの現状はどうなのかを見てみよう。介護は家族介護という言葉が
あるように、家族ができるサービスであるとの認識が一般的である。しかし、現
在高齢者福祉施設で提供されている介護サービスは、サービス開発とイノベーシ
ョンの歴史を経て、高度な専門的サービスになっている。例えば、家族が認知高
齢者を家庭で介護することは、物理的精神的にも大きな負担になっていることは
理解されている。マスメディアが家庭における認知症介護を美談として伝えるこ
とが、まだかなりある。実際には、認知高齢者の介護は組織的にすなわち高齢者
福祉施設で多くの事例を経験した、複数の専門家によって介護される方が、要介
護者にとっても安定した高品質のサービスが受けられる。介護サービスは、家庭
において素人が行える範囲を超えた、専門的なサービスになっているのである。
もちろん、最初からこのような介護サービスが、実施されたのでは無い。かつ
ては養老院という福祉施設で高齢者は介護されていた。身体機能が低下すると共
に高齢者は寝たきりになった。かつて保険業界が販売していた介護保険では、寝
たきりのみ担保、痴呆症のみ担保という特約もあった。高齢者福祉に携わる人々
は、寝たきりにしない取り組みを組織的に実施して成果を上げた。この他に高齢
者の安全のためにベッドに拘束することを行わない拘束ゼロ、褥瘡にならないよ
うにする取り組み、転倒防止の取り組みなどを経て、高齢者の個別の事情を斟酌
して高齢者毎に違う価値観・生活スタイルに合わせて介助する、高度な介護技術
が確立してきている。さらにサービス提供形態も、かつては施設収容型のサービ
スだけであったが、在宅介護を支援するサービス(例えば、デイサービス)、デ
イサービスと宿泊サービスを結合し更に包括的にした小規模多機能施設など革新
的なサービス形態が開発されてきた。介護サービスに関して産業としてみると、
その歴史はサービス開発の連続であり、そのサービス開発を実現するイノベーシ
ョンの歴史であった。保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・
グループにおける議論でも、またマスメディアの報道でも、介護サービスの歴史
と現状について理解されているかはなはだ疑わしい。
◇時代錯誤の現物給付論
金融審議会の保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グル
ープにおける生命保険業界のプレゼンテーションでは、1)定額保険の保険給付は
金銭給付に限定されているが、現物給付が認められることによって、多様化する
消費者のライフスタイルに対応した、多様な給付を選択できる付加価値のある商
品やサービスを提供するができること、および2)現在、介護保障商品の販売や子
会社等による一定の介護サービスの提供を行なっているが、子会社の業務範囲規
制が緩和されることによって、今後さらにグループで幅広く介護事業を展開し、
お客さまに対して、一体的な介護サービスを提供することができると主張されて
いる。
新聞報道でも同ワーキング・グループの議論は、金銭給付か金銭給付・現物給
付の選択か、保険会社の子会社の業務範囲をどこまで広げるべきかとの問題とし
て意識されている。かつて、金融事業が希望に満ちあふれていたころ、保険業界
は、本体であるいは子会社を使って金融関係ビジネスに進出したいとの強い意欲
があった。行政との交渉の末、保険会社による国債の引受だけで無く国債の販売
を認めさせ、投信投資顧問会社を保有し投資業務に乗り出し、証券子会社を保有
し確定拠出年金事業に参入した。隣の芝生が自分の庭の芝生より青く見えた時期
の話である。この時期の政策課題は、保険会社の業務範囲を、子会社を含めどう
するかとの問題であり、行政が有識者を集めて議論し、徐々に認めていくことが
行われていた。今回浮上している、現物給付選択論と業務範囲拡大という、問題
設定と政策議論も、かつてのそれと変わっていない印象を与える。いまでも顧客
の選択肢拡大と保険会社の業務範囲の拡大の是非が本当に基本的な問題なのだろ
うか。確かに、保険規制は上述の通り保険事業専業と原則金銭給付を基本として
おり、これが現在の時代に即していない。時代の変化に応じて規制改革・規制緩
和を進めていく必要がある。規制を緩和さえすれば、うまくいくという時代錯誤
に囚われていることは無いだろうか。
◇保険金給付の意義:何でも買うことができる金銭給付
何故生命保険も損害保険も金銭給付をして、現物給付をしないのか。硝子保険
では保険金支払に代えて現物であるガラスを被保険者に引き渡すとの約款があっ
たが、実際にそのような事故処理をしたことは聞いたことが無い。保険会社が調
達したガラスより、受け取った保険金で自分にとって都合がいいガラスを購入す
る方が好まれていたからだろう。金銭給付は、どんなモノとも交換できる現金を
支払うことであり、保険金受取人に無限の選択を提供することである。現物給付
か現金給付かという選択は、それ自体大きな意味が無い。もしあるとすれば、保
険会社は、高度の専門業者よりその分野で格段に優れた財・サービスの提供者で
ある場合には、意味があるだろう。ガラス製造販売業者より保険事業者がガラス
の品質・商品性に関して優れているとは考えにくい。逆にガラス製造販売業者よ
り保険事業者が、保険について優れていると考える人はいないだろう。
◇分業と統合の分かれ目:顧客の問題解決の領域のどこで貢献できるか
現物給付議論の本質的な問題は、高度に専門化した事業が分業体制で提供され
ている経済のなかで、分業でなく統合すると顧客にとって価値が生まれるかであ
る。保険会社は他のビジネスを統合すると、新しく価値を生み出し、顧客のニー
ズに呼応した利便性を提供できるかが問題なのである。
アパレル業界は、長い間製造業者と卸・小売り業者の分業体制であった。しか
し、日本ではユニクロに見られるように製造から小売りまで一貫体制とする統合
モデルが成功を収めている。成功の理由は、統合によるコスト削減、低価格とい
う側面もあるが、ベーシックでファッショナブルを値頃感で提供し続けるという
新しい価値創造を実現したことにある。顧客にとって、ファッショナブルだから
高いという常識に対して、そんなに高くなくてファッショナブルな製品が無いと
いう問題領域に、ベーシックで機能的なファッションを値頃感ある価格で購入で
きるという問題解決を提供したから成功したのである。ただ安いだけでは成功し
ない、製造から販売まで一貫体制を造っただけでは成功しないのである。果たし
て、現物給付論、保険会社業務範囲拡大論では、統合による価値創造に関心を向
けているだろうか。
保険は、死亡・火災・自動車事故に遭遇するかもしれない顧客に問題解決を提
供する手段である。現実に死亡・火災・自動車事故に遭遇したときに、保険会社
は選択肢が無限の金銭を支払う解決策を提供してきた。しかし、顧客のニーズ・
欲求が高度化している今、今まで通りでいいのかという問題は確かにある。介護
保険の保険金を受け取ったが、それではどのようなサービスを購入すればいいの
か、どのような業者を選べばいいのか自信を持って選択できる保険利用者ばかり
では無い。保険会社が貢献できる、顧客の問題領域は確かに存在する。問題解決
の手段は、現物給付とは限らない。顧客の問題解決の領域のどこで、保険会社が
貢献できるかが、本質的な課題なのである。
(保険リサーチャー)
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【4】つくる・かわる・ずっとつづける(70) 葭谷 広行
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老舗料亭旅館での話
先日、幹部3人で合宿をした。次年度の方針や中長期の将来についてもじっく
り話をしようということで、泊りがけで実施することになった。折角だからちょ
っと足を延ばして温泉で、という案もなくはなかったが、忙しい時期でもあり、
時間を節約しようと、市内の老舗料亭旅館で開催することにした。
この店は料亭がメインで、その隣に宿泊施設が併設されているという感じなの
だが、以前は相当栄えていたとのこと。近年では公的な宴会が減り、また近隣に
ホテルが続々と出来たため、競争が激化。おかげで値段が下がり、私たちのよう
なものでも利用しやすくなったが、往年の華やかさはない。しかしながら、10
0年以上の歴史が十分感じられる落ち着いた施設だった。
当日は次年度の要員計画、拠点の展開、生保の取組み方、システムの活用など
について活発な意見が飛び交い、有意義な議論ができた。また、食後にはお酒も
入り、さらに議論は発展。今まで誰もやったことのないような取組みを一番乗り
で次々にやって、今までにない保険代理店を創ろうなどと、将来の夢も語り合っ
た。
大きな夢を語り合っていたので、声も大きくなっていたのだろう。年配の紳士
が私たちに近づいて来て、ちょっと離れたところでこちらの様子を見ている。騒
ぎ過ぎてまずかったかなと思っていたところ、「あの人はここの社長です」と仲
居さんが教えてくれた。
もう一度振り向いて見ると、今度は何となく目があった。「どうですか?ご一
緒に」と声を掛けると、にこやかに輪に入ってきてくれた。「さっきまで別の部
屋で喜寿のお祝いの会をやってたんですよ。でもみんな帰っちまって、もうちょ
っと飲みたかったんですよ」とのこと。それからというもの、いろいろな興味深
い話を聞くことができた。別室での喜寿の祝いの会は、この社長が若いころから
付き合っている異業種交流会のメンバーであること、以前はたくさんいた仲間が、
75歳で体も元気、会社も元気なのは8人になってしまったこと、旅館の歴史な
どなど、面白く聞いていた。
彼は終始にこやかな紳士であったが、一瞬真顔になる場面があった。「この商
売は3か月お客さま来なくなれば潰れる。どんな料亭だって必ず潰れる。だから
信用が第一なんだ。」私たちは、シーンとなった。私たちの商売だって、3か月
お客さまが来てくれなくなったら潰れる。料亭や旅館に限ったことではない。保
険代理店だってお客さまが来なくなったらおしまいだ。当たり前のことなのだが、
ズシンと響いた。前段の議論や将来の夢も大事だが、お客さまがいなくなれば利
益も効率化も将来の夢も、すべてそこでおしまいだ。
その後30分ほど紳士とお酒を酌み交わす間、彼は3度繰り返した。「信用が
大事なんだ。」と。予想外の勉強をさせてもらった合宿だった。
(ユナイテッド・インシュアランス株式会社 代表取締役)
http://utdi.co.jp/
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【5】生命保険の仕事は関係構築ビジネスです(25) 宮本 久史
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暇だと思われてもいけないが、忙し過ぎると思われるのはもっとまずい
ラーメン屋さんなんかだと、混んでいて並んで待っている人がいたりするとそ
のお店は流行っていて美味しいんじゃないかと思ったりしますよね。繁盛してい
るラーメン屋さんの中には、わざと席数を少なくして、行列を演出しているとい
う話も聞いたことがあります。賑わい感とでもいうんでしょうか。
どの商売・仕事にも、そういうある程度の演出は必要なんじゃないか思います。
私が独立した時も、ラーメン屋さんのにぎわい感に相当するものを、自分の場
合にはどうしたらよいかと考えました。
私の場合は、お客さま(相談経験者)の声をホームページに掲載することが
賑わい感に繋がると思い、はじめの頃は、相談経験者の人にアンケートに協力し
ていただける方にはクオカードを進呈して「お客様の声」を集めていきました。
(相談をした感想を書いてもらったり、実際にホームページに映像で出演しても
らってその感想を撮ったこともあります)
もう一つの賑わい感としては、相談者が気が向いた時にすぐには相談ができな
い、という多少のハードルを設けることは必要だと思っています。独立した頃の
話ですが、スケジュールが空いているにも関わらず、相談予約をした日から、だ
いたい1週間から10日後くらいの日時に予約を入れるようにしていました。相談
日までに資料などの下準備に時間が欲しいというのももちろんありましたが、予
約日から近くの日を提示して、あまり暇だと思われてもまずいから、というのが
主な理由です。
しかし最近では、「お忙しいところ急で申し訳ないのですが」とか、「来月に
更新が迫っているので」というような、本当に急いでいる様子が分かる場合には、
できるだけ要望に応えて引き受けるようにしています。
例えば「今週中に相談したい」という依頼があった時は、「今週ならこの日と
この日の時間帯はこの時間からです。来週であれば、この日のこの時間帯とこの
日のこの時間帯ならお引受けできますが、ご都合いかがでしょうか。時間帯が遅
くても構わないのであれば○時から相談をお受けすることもできますが」という
ような受け答えをします。というのも、あまり忙しい様子を演出し過ぎても本当
に急いでいるお客さんだったら、他のところで相談しに行ってしまうかもしれな
いからです。
これはネット経由での相談申込に多いのですが、文体から急ぎの相談依頼とい
うのが想像できる時には、メールで問い合わせが入ったとしても極力「電話で回
答する」方法を取ります。メールでは、やりとりをする時間がかかる場合もあり
ますし、電話だと相手の話し方から人となりイメージすることもでき、また文章
では伝わり辛いこちらの細かいニュアンスを伝えられるというメリットもありま
す。
例えば、こんな感じです。【宮本】「メールを拝見しまして、今度の日曜日が
ご希望ということなのですが、午前中にどこどこで相談が入っていまして、その
後でよければ伺えるのですが。相談が終わる時間が確定できないので、そちらに
向かう前にお電話をするという形で宜しいですか?」というようなアポの入れ方
をします。その時に、「だいたい午後1時〜2時の間にはお伺いできるかと思い
ますが、時間的にはちょっと流動的な感じになってしまいますが宜しいですか?」
と付け加えると、依頼者の方も、忙しい中頑張って調整してくれてるんだな、と
いう印象を持ってくれて、にぎわい感を損ねずに、早めの相談予約を入れられる
と思います。
賑わい間のある演出を作ることも大切ですが、それが行き過ぎると相談する気
がある見込み客をも取りこぼしては元も子もありませんから、そこは臨機応変に
対応することが大切です。
((株)ファイナンシャルプランナーズ花園 代表取締役)
http://www.osaifu.net/ http://www.fp-osaifu.net/
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毎週、注目した記事を選んで、感想や意見などをコメントして頂く、名付けて
comment@inswatchを始めています。会社名等所属を明らかにしたfacebookのアカ
ウントをお持ちののinswatchの読者であれば、どなたでも参加できます。ご希望
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■編集後記
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最近、寝ても夢を見なくなったと思っていたのだが、先週変った夢を見た。知
人と行列に並びタクシーを待っていたのだが、列はなかなか進まず、その知人が
タクシーを拾ってくるという。しばらくすると、通りの向こうで、タクシーを拾
い手を振る友人の姿。近づくと先に乗って行けという。タクシーに乗り込んだ途
端、画面が転換、なんと犬に手綱をつけて走っているではないか。しかも大型犬
ではなく、細長いダックスフンド。はて、知人はどうなっているのだろうと振り
向くと、これも柴犬のような中型犬に乗って後を追いかけてくる。とにかくこれ
はおかしいと手綱を絞って停車(停犬)。友人にタクシー代はどうしたらいいの
だろうとたずねた時に目が覚めたが、足が地面につきそうで、夜の通りをかなり
のスピードで走った感覚だけが鮮明に残った。こんな夢を見るのはだいぶ疲れて
いるのかも。連休はゆっくり休み、次は天馬に乗りたいと思う。(石)
http://blog.livedoor.jp/inswatch02
人の味覚は変わるものである。12月から、糖質を制限することを基本とする食
事コントロールとエクササイズの併用による本格的減量を開始してから、すでに
2ヵ月以上を経過した。8キロほどやせ、血圧も下がって来たのはうれしい限り
だが、皺が目立つようになったのが気になる。食生活はガラリ変わった。丼物や
コテコテラーメン、そして揚げものを摂ることがほとんどなくなった。このコラ
ムのトーンも変わろうと言うものだ。その一方で、野菜が美味しく感じられるよ
うになった。水泳やエクササイズの後で、食する果物がこれまた実にうまく感じ
られるようになった。リンゴやイチゴはもちろんだが、最近ハマっているのはパ
イナップルである。このところスーパーで1個100円という値段にも驚かされるが、
期待以上に甘くジューシーである。果糖の取り過ぎは要注意だが、疲れた体に潤
いを与えてくれる。周りはいつまで続くものかと疑っているが、本人は手ごたえ
を感じ始めている。(中、95.0 30.7 103)
http://blog.livedoor.jp/inswatch01/
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