インスウオッチ Vol.1069 2021.04.05 https://www.inswatch.co.jp/
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私の古巣の日鉄は現在コロナ禍で苦戦していますが、1985年のプラザ合意後の円高不況で設備集約に追い込まれ、私は過去の経験を買われ、遊休化した堺製鉄所の開発プロジェクトを担当することになります。
日鉄、プラザ合意並みの能力3割減 高炉2基も一時休止
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58902170Y0A500C2TJC000/
鉄鋼業の苦戦をよそに、世の中はバブル景気に浮かれていて、大阪都市圏で開発規模が約200ha、東京ドーム40個分という魅力にひかれて、国内外から様々な提案があり、連日のミーティングや会食でバブルを謳歌しましたが、最終的にはUSJを核とした街づくりで進めることにしました。
USJ開園までの道のり
http://park14.wakwak.com/~usj/rekishi01-03.htm
残念ながら諸般の事情でUSJの誘致はなりませんでしたが、大変楽しく貴重な経験をさせてもらいました。その時出会ったのがF1レーサー鈴木亜久里のCMで鮮烈デビューの東芝ダイナブックでした。ダイナブックはシャープの傘下になりましたが、ビジネス用Note PCとして今も健在です。
満を持して誕生した「The Note PC」=dynabook Gシリーズの魅力
https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1906/11/news001.html
鈴木亜久里CM(バブル時代の雰囲気が味わえるCM 音がでます!)
https://www.youtube.com/watch?v=nGZw6rJjYGo
バブルで地価と建設費がウナギ登りになる中、土地利用のパターン、USJの集客予測、開発前後の地価想定、開発利益の自治体(大阪府・堺市)やUSJへの還元条件などを考えながら、ダイナブックで表計算ソフトのアシストカルクを使い倒し、様々なシミュレーションをしました。
ビジネスネットワーキング(16)表計算ソフト 保険毎日新聞連載
http://www2.biglobe.ne.jp/~cho/columnBN/mainichi16.htm
ダイナブックは、実は欧米で成功したモデルの逆輸入機で、パソコンは日本の外では、全くの別世界が展開されていました。IBM PC互換機の世界で、IBMが1984年に発売した「PC/AT」と互換性のあるパソコンが、事実上の標準(世界標準)となっていて、ダイナブックはその流れを汲んでいます。
『IBM PC互換機』:PCを独占から救った敵対的相互運用性
https://p2ptk.org/monopoly/antitrust/2712
NECのPC98は、日本語の壁に守られて独走していましたが、日本語をソフトウエアで処理できる技術が開発され、水平分業でコスト競争力を持つようになった世界標準機にその座を明け渡すことになりました。
国民機パソコン、その誕生から引退まで(後編)
https://bit.ly/3sB9MdS
日経ビジネス最新号(3月29日)で、1994年に我が国最初のインターネット接続サービスを始めたIIJの鈴木幸一会長が、ビジネスを地球儀で考えなかった、振返れば後悔8割と率直に話されています。ITの世界では1億人のマーケットサイズは微妙な数字のようです。
今回国内でPC98並みの成功を収めたLINEが、ソフトバンクの傘下になり世界展開を強化しようとする矢先に、国内回帰を迫られることになりました。開発力の低下とコストアップで、折角のチャンスを生かせず、またしてもPC98などの轍を踏むのではないかと危惧しています。
LINE個人情報問題でユーザーにとっての「本当の不利益」とは何か
https://diamond.jp/articles/-/266589
新日鉄での最後の仕事を終えて、IIJがインターネット接続サービスを始めた1994年にサラリーマンを卒業、独立することになります。
(経営数理研究所代表 インスウオッチ客員研究員)
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