インスウオッチ Vol.1069 2021.02.08 https://www.inswatch.co.jp/
前回>http://cho.eforum.biz/modules/news/article.php?storyid=175
◆第1のプラットフォーム(メインフレーム/端末システム)
私は高度成長の最中の1963年、後に八幡製鉄と合併して新日鉄となる富士製鉄に入社しました。第1のプラットフォームの草創期で、八幡製鉄が新設の君津製鉄所の生産管理用に、最新鋭の汎用大型計算機(メインフレーム)IBM360を4台採用することが話題となりました。
IBM360で製鉄所をノンストップ・リアルタイムで動かすという世界初の野心的プロジェクトで、コンピュータに関心を持つキッカケになりましたが、1969年に私は会社より経済企画庁に派遣され、メインフレームと関わりを持つことになりました。
ビジネスネットワーキング(2)汎用大型機の時代 保険毎日新聞連載
http://www2.biglobe.ne.jp/~cho/columnBN/mainichi2.htm
現在デジタル庁で民間スタッフ活用の話が進んでいますが、当時企画庁は民間からのスタッフとの合同チームで経済白書を作っていて、私はFortranという科学技術用コンピュータ言語を勉強して、計量経済モデルを解いて物価の予測をするといったことに、メインフレームを使っていました。
当時は、中国のちょっと前のように、実質成長率が年率10%を超える高度成長が続いており、私が企画庁に入る前年の1968年に当時の西ドイツを抜いてGNPが世界第2位になるという時代でしたが、物価の上昇が大きな懸念材料になっていました。今から考えると隔世の感があります。
メインフレームは、1980年代に投資のピークを迎えますが、わが国では失われた30年の間更新が進まず、橋やトンネルといったインフラの老朽化が社会問題になっていますが、実はITの世界でも老朽化が深刻で、それが前回ご紹介した≪2025年の崖≫レポートの背景にあります。
メインフレームのメーカーは現在6社で、富士通、日立製作所、日本電気と日本の3社が残っていて健闘しているように見えますが、これは失われた30年で日本がガラパゴス化している結果とも考えられ微妙です。
メインフレーム用言語にはFortranとならんで、事務計算用にCOBOLという言語が使われていて、これから続々とCOBOLの使い手が定年を迎えるという事情も2025年の崖にはあります。
6割の企業にCOBOLシステム、「お荷物」なのに捨てられぬhttps://active.nikkeibp.co.jp/atcl/act/19/00097/060700003/
保険業界については2025年の崖問題については、各社とも比較的対応が進んでいるように見えますが、代表例として2020年のDX銘柄に選ばれた損Jの取組みを紹介します。
≪未来革新プロジェクト≫
2016〜22年、1500億円、基幹システム更新
http://www.sompo-sys.com/recruit/future/project.html
https://bit.ly/33qkYQ6
2020年DX銘柄(経産省が優秀上場企業35社を選定)
https://www.meti.go.jp/press/2020/08/20200825001/20200825001.html
1980年代に入るとパーソナルコンピュータ(パソコン)が登場し、第2のプラットフォーム(クライアント/サーバ)へ向けて、集中から分散へとITが舵を切ります。次回より何回かに分けてその辺の事情をお話しします。
(経営数理研究所代表 インスウオッチ客員研究員)
次回> http://cho.eforum.biz/modules/news/article.php?storyid=177
インスウオッチ Vol.1069 2021.01.25 https://www.inswatch.co.jp/
前回> http://cho.eforum.biz/modules/news/article.php?storyid=174
◆デジタルトランスフォーメーション(DX)
わが国でD Xが世間に広く知られることになったキッカケは、2018年9月に経産省が出した≪ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開≫というレポートでした。
https://bit.ly/37wFvUC
我が国はバブル崩壊後経済の低迷が続き、失われた30年となりましたが、レポートでは、前回述べたガラパゴス化したITシステムが老朽化しており、放置するとDXが進まず、年間12兆円の経済損失が生じる可能性ありと警鐘をならしていますが、このレポートでのDXの定義は以下の通りです。
経産省のDX定義(2018年)
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
この定義はIT調査会社IDC Japanの以下の定義を下敷きにしたようです。
IDC JapanのDX定義(2016年)
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンス(経験、体験)の変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること
私は、ITのプラットフォームが集中と分散という流れを繰り返しながら、導入期→成長期→成熟期と30年周期で回っていて、前の世代の成熟期に次の世代の導入期が重なるという形で動いているとの仮説を立てています。
第1のプラットフォーム(メインフレーム/端末システム)
1960年代から1980年代 集中の流れ
第2のプラットフォーム(クライアント/サーバーシステム)
1980年代から2000年代 分散の流れ
第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)
2000年代から2020年代 集中の流れ
第4のプラットフォーム?(IoT、エッジコンピューティング、5G、ブロックチェーン)
2020年代から2040年代 分散の流れ
我が国の問題は、ガラパゴス化した第1と第2のプラットフォームが邪魔をして、第3のプラットフォームにスムーズに移れないことで、DXの前提であるデータ活用が困難になっていることです。暮れも迫った昨年12月28日、DXレポートの中間取りまとめが発表になり、DXをキッチリ進めている企業は上場有力企業でも未だ5%程度とわが国の遅れを嘆いています。
https://bit.ly/3igIlC8
中間取りまとめでは≪レガシー企業文化からの脱却≫が必要と強調していて、前回述べたように、コロナ禍を機に日本人が心を入れ替えられるかどうかの今が正念場と言えそうです。次回から時代を追ってITプラットフォームの変遷を見て行きます。
(経営数理研究所代表 インスウオッチ客員研究員)
次回> http://cho.eforum.biz/modules/news/article.php?storyid=176
インスウオッチ Vol.1067 2021.01.11 https://www.inswatch.co.jp/
≪私は、年齢55歳、某大手メーカーで企画畑を長く歩いてきた。早期退職制導入を期に昨年思い切って退職し、中小企業診断士として、新たな一歩を踏み出している。≫という書き出しで、丁度25年前、保険毎日新聞(保毎)にコラムの連載をスタートしました。
http://www2.biglobe.ne.jp/~cho/columnBN/mcolumn.htm
これは当時保毎で損保版の編集長をしていた中崎さんとひょんな機会で知り合いになり、この連載を手始めにインスウオッチ発足の2000年までの間執筆の場をもらい、そのご縁で保険業界と全く無縁の私が、皆さんとご縁を結ぶことになりました。
当時インターネットのビジネス利用が立ち上がり始めていて、ビジネスがインターネットでネットワークされることで明るい未来が見えて来そうとの予感があり、お題を【ビジネスネットワーキング】としました。
http://www2.biglobe.ne.jp/~cho/columnBN/mainichi5.htm
ところがそれから25年、コロナ禍で図らずも我が国ではビジネスが旨くネットワークされていないことが露呈しました。これだけはっきりデジタル化の遅れが見える化したので、さすがの日本人も心を入れ替えるのではと考え、当時を振返りつつ【IT今昔物語 デジタルで再出発】というお題で、隔週での連載をスタートします。
我が国ITシステムの大きな問題は、官民とも、組織毎に屋上屋を重ねて独自の生態系をつくることでガラパゴス化し、お互いがネットワークされず、繋がりが大切という時代の流れについて行けなくなっていることです。
保険業界で見れば、米国では標準化が進み既に20年以上前に多数の代理店や保険会社が参加した保険比較見積りサイトが運用されていましたが、わが国では当時共同ゲートウエイの発足といった明るい兆しはありましたが、現状は残念ながら20年以上前の米国に未だキャッチアップ出来ていません。
保毎連載コラム(1999年1月〜保険代理店の情報化)
http://www2.biglobe.ne.jp/~cho/coiumDG/ren3.html
我が国では、業界での決まった手続き、いわゆる非競争的領域を皆で相談して標準化し、業界全体として生産性を上げるといった取組みが苦手ですが、今話題のデジタルトランスフォーメーション(DX)が、その解決の糸口になるのでないかと期待しています。
25年前のインターネットと同様、書店にDX本が溢れていますが、次回はもやもやして掴みどころのないDXという言葉の意味を考えて見ます。
(経営数理研究所代表 インスウオッチ客員研究員)
次回> http://cho.eforum.biz/modules/news/article.php?storyid=175
インスウオッチ Vol.803 2017.12.18
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民泊から見た日本(8) 民泊とIT 長 忠
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私が民泊を始めた主な動機は、これからITはワクワクする変化が起こるので、民泊を通じてその変化を実体験したいということです。
私は、汎用機(大型コンピュータ)時代から約50年、利用者の立場でITとお付き合いしてきましたが、これから起こる変化は大変面白そうです。
私の50年
http://cho.eforum.biz/modules/xoopsfaq/index.php?cat_id=7
民泊とITについてキーワードとして、API連携、IoT、AIの3つを挙げたいと考えていて、これから3回、それらについてお話をします。
◆API連携
APIとは「Application Programming Interface」の略で、自社のシステムの機能と仕様を公開して、他者のシステムと連携をすることを言います。民泊で現在私が使っている仕掛けでご説明します。
民泊ではカギの受け渡しが悩みの種です。私が導入している玄間のカギは≪世界初のWiFi型スマートロック≫という触れ込みのカギです。
http://remotelock.kke.co.jp/home/
このカギはAPIを公開しているので、例えば、民泊の仲介サイトが予約を受け付けると、予約したお客(ゲスト)に予約の期間だけ有効なワンタイムのパスワードを発行し、自動でメール通知を行なうことが可能となっています。
もう1つの悩みがスケジュール管理です。私は今のところTripBizの1社のみに掲載していますが、複数の仲介サイトに登録すると、放っておくとダブルブッキングが起こります。これを防ぐ手立てです。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000017613.html
私はこの機能を今のところ掃除業者への依頼に使っています。指定のURLを掃除業者に通知するだけで全てOKです。
餅屋は餅屋同士API連携して、いわゆるオープンイノベーションを起こすという流れが加速しており、民泊もこれから自動化が何処まで進むか興味津々です。
追伸
民泊の経過報告です。研修専用民泊というコンセプトで、TripBizに登録して3ヶ月、反応がなく苦慮していましたが、2階に入居した若者4人とのコラボでユニークな民泊進められそうです。形になったら、またご報告します。
bike&bed Tokyo
http://cho.eforum.biz/
インスウオッチ Vol.801 2017.12.04
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民泊から見た日本(7) 住宅宿泊事業法 長 忠
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民泊の大部分が許可を得てない違法物件という状況で、政府もさすが放置は出来ず、遅ればせながら住宅のまま民泊の営業を認める住宅宿泊事業法(民泊新法)を成立させ、来年6月15日に施行の運びとなりました。
前回、国家戦略特区での条件として、民泊の実情とかけ離れた、6泊7日以上の宿泊に制限されたとお話しましたが、ここでも旅館ホテル業界の圧力で、営業日数が年間180日に制限されることになりました。
東京都の民泊平均稼働率は60〜70%程度とされているので、年間180日に制限されることで、採算が取れない事業者が相当出そうです。まっとうな対応としては撤退ですが、届出をせずに無許可で営業を継続する事業者も相当残りそうで、取り締まりが旨く行くかが、民泊新法定着のカギになりそうです。
また、事業進める側からみて、もう1つ頭の痛い問題があります。地方自治体による上乗せ規制です。騒音、ゴミといった問題に頭を痛めている自治体が、国に働きかけ、条例での上乗せ規制を認めさせました。
例えば、京都市では≪金閣寺や南禅寺周辺など市中心部を外れた住宅密集地の民泊は観光閑散期の冬に限定する≫といったキメの細かい規制を考えていますが、一般的には住居専用地域での平日の営業を制限するといった感じになりそうです。
カメの歩みの規制改革にイライラして、ここ何回かネガティブな話を書き連ねて来ましたが、次回はすこし前向きに、民泊のIT活用について、お話ししようと思っています。